2018年04月25日

1973年公開映画 『日本沈没』 特撮の裏側



過去のブログ記事でも時々お話しさせてもらってるんですけど、わたしは子ども時代を長崎で過ごしています。

今から約半世紀前の話。

当時は映画館の数が現在とは比べ物にならないほど多かったんです。

今のようなシネコン形式ではなく、「大映」とか「東宝」とか「松竹」などの単館、単スクリーンが当たり前。

わたしの住んでるところは結構な田舎だったんですけど、そんな時代なので歩いて20分くらいのところに「大映」の映画館があったんですね。

幼稚園から小学校2、3年くらいまでは4つ上の兄に連れられて、この映画館で『大魔神シリーズ』や『ガメラシリーズ』、『妖怪もの』などを楽しみました。


小学校高学年になると行動範囲も広がり、友人と路面電車(チンチン電車)を使って浜の町という繁華街の「東宝」に行くようになり、ここで『ゴジラ』を観るようになったのですが、当時のゴジラはすでに人間の味方。

怖さもとっくになくなっていて、吹き出しを使ってアンギラスとしゃべるような愛嬌のあるゴジラだったので、友人たちとワイワイ言いながら楽しんだものです。

そして1973年公開の『日本沈没』

楽しい『ゴジラシリーズ』と同じ感覚で友人と観に行ったんですが、いざ観てみると、その凄まじさに絶句・・・なんだか疲れちゃって、みんなでうなだれて劇場から出てきたことを今でも覚えています。


そんな映画のメイキング本「1973 『日本沈没』 完全資料集成」が先日発売されたので早速購入。


この映画は1973年3月に出版された小松左京氏のベストセラー小説を基に作られたのですが、この本を読んでまず驚いたのは、その企画から公開までの早さです。

本によると制作発表が同年8月31日。 

特撮班のクランクインが9月3日・・UPは12月3日。 つまり撮影期間たった3ヶ月。

俳優さんを使った本編のクランクインは9月27日でUPは12月11日。

その後、大急ぎで編集し検定試写が12月22日。 翌週の12月29日が公開初日なので、公開一週間前の完成だということです。

あの、濃縮された140分余りの映画をこの短期間で制作したのですから、驚きですよね・・。


ちなみに製作費は5億円だとか。

当時はラーメン一杯が80円〜100円くらいだった記憶があるので、当時の物価からすると超大作です。



ストーリーについては昔書いた記事があるのでそちらを参照ください。

参照:http://meshifuroneru.seesaa.net/article/420282469.html


本日は、この「1973 『日本沈没』 完全資料集成」の中で、個人的に読んで楽しかった特撮の舞台裏をシーン別に挙げていきたいと思います。



@ はるか上空から見た日本列島

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CGなんて存在しない時代です。

タイトルバックにもなったこの日本列島は、15mの大きさで作ったミニチュア。 

ゼラチンの粉末を溶かしたドロドロの水の海に浮かべ、ジャッキで上下するように作られたそうです。

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なので、だんだんと沈んでいく日本列島は別々に作ったものではなく、ジャッキの上げ下げとゼラチンの海の水かさで調整し撮ったもので、列島の周りでうねる白波はポスターカラーで描いたものだそうです。



当時、劇場で鑑賞した時に、子どもながら納得がいかなかったのは、この日本列島で噴火する火山の煙がタバコの煙みたいにプカプカしていてすごく作り物感がしたことなんですね。

「なんでもっとスローモーションにしないんだろう?」・・この疑問を解決する中野 昭慶特撮監督のコメントが本に載っていたので、45年ぶりに気持ちがスッキリしました。

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このプカプカ煙の噴火シーンは5倍のスロースピードで撮っていたそうなんですが、それでも煙の動きが軽かったので、本当はもっとスローにして重い雰囲気を出したかったそうなんです。

でも、そうするとコマ伸ばしという作業で一コマ一コマ手を加えないといけず、2週間から3週間かかる・・・・公開に間に合わない。

泣く泣くあきらめたそうです・・考えてみれば当然ですけど、中野監督も気になってたんですね。






A 深海潜水艇 わだつみ

藤岡弘演じる主人公が操縦する「わだつみ」のミニチュアは1m25cmだそうです。

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この「わだつみ」で日本海溝を探査中に乱泥流に遭遇してしまうんですが、深海での乱泥流なんて世界中の誰一人見たことがないんです。

そこで考えたのが、特注のブリキ箱にドライアイスを詰め込み、そこでキンキンに冷やしたスモークを流す方法。

冷やすことで重くなり、岩肌を這うように流れるスモーク・・さらにその岩肌を凸凹にすることによってスモークにうねりが発生する。

そんな工夫で、あの迫力ある乱泥流が作られたんですね。

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B 東京壊滅シーンはちゃんと科学的根拠に基づき描いている

例えば高速道路の路面が橋げたから落ちるシーン。

高速道路の接合部の片側は夏の熱膨張に備えてフリーになっているそうです。

なので、片側からドスンと落ちるように描いたそうですが、その後LAの大地震でその正しさが証明されたとか・・。

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当時の中層マンションは下から3分の一くらいのところが一番ゆがみが集中するので、そこから崩れる。

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化学建材で固められた都会の火事は炎が高く舞い上がる。

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現在はこのあたりのリアルさが、悲しいかな阪神淡路大震災や東日本大震災で実証されているのは喜べることではないですよね。







C 富士山の噴火は超望遠で撮影。

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富士山は高さ4mで作られているそうです。

当時、少年雑誌か何かで「実際の火山灰を持ってきて作った。」との記事を見たようなかすかな記憶があるんですが定かではありません。

・・このメイキング本では「土で作った」としか表現してませんので。

頂上の雪はシッカロール(ベビーパウダー)です。

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この富士山を大きくリアルに見せるための工夫が、「遠くから見ているような空気感を作る」ことです。

そのためにカメラを出来るだけ富士山のミニチュアから遠ざけ、望遠で撮ることにしました。

カメラは富士山のミニチュアがあるスタジオから飛び出し、外から撮影するんですね。

飛び出た部分には長い蚊帳のような暗幕をかけて、余計な光が差し込まないようにしていました。

そのおかげで、あのリアルな噴火シーンが撮影できてるんです。


ちなみに、いくらスローモーション撮影でリアル感を出そうとしても、近距離からの撮影だとミニチュアのスケールがばれてしまうことが『恐竜100万年』の火山噴火シーンでわかると思います。








D そのほかもろもろ


ひっくり返る鉄橋「永代橋」は映る半分しか作ってないが、それでも4mの大きさ。

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氾濫する濁流には墨汁をたっぷり混ぜてどす黒さを表現。

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マントル対流や「D計画」の中での日本沈没シミュレーション映像は、『狼少年ケン』『悟空の大冒険』などで有名なアニメーション作家月岡貞夫氏が作成。

CGが存在しない時代なので、コンピューターのシミュレーション映像でさえもアニメなんですね。

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アナログ特撮は必ずカメラの前に被写体が存在している特撮です。

崩れ落ちるミニチュアのビルや火山、濁流にのまれる家々など・・すべてが実際に作っているものなんですね。

なので、その制作物と製作スタッフが同居している舞台裏を見ることが非常に楽しいんです。

CGの制作風景のようにCG製作者がマウス片手にPC画面を見つめているだけではなく、ほこりにまみれ薄汚れたTシャツを着て、タオルを頭に巻き汗だくでセッティングしているスタッフや、爆破シーンの後のまるで火薬のにおいがするような舞台裏の映像など、見てるだけでワクワクします。


あるスタッフなどは「あんなに真っ黒になった作品はなかった。爆発で舞い上がる粉を一日中こね回してるので顔は真っ黒で目だけぎょろっとしてた。 おかげで、近くの食堂に、椅子やテーブルが真っ黒になるから。って出入り禁止になったよ。」・・と雑誌の中でコメントしていました。



そんな楽しい制作秘話と舞台裏の写真が盛りだくさんの1冊です。

掲載された舞台裏の写真の数々は、ぜひ実際の本の中でご確認ください。

「ミニチュアを使った制作風景」写真の多さは、今までの「日本沈没」関連の本とは比較になりません。

ミニチュア特撮ファン垂涎の一冊だと思います。

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まだまだ書きたりない舞台裏のお話がいっぱいあるんですが、所詮それはこの本の受け売りになりますので、このあたりで一旦締めさせてもらいます。





やっぱりアナログ特撮は最高ですね(#^.^#)。


・・・・それでは、今日はこの辺で失礼します。





posted by タバスコ at 02:28| Comment(0) | ミニチュア特撮映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月14日

怪しすぎるご近所さんを疑う映画


先日『ユージュアル・ネイバー』というサスペンスホラー映画を鑑賞しました。


両親を失い、失意の中で祖父母と片田舎で暮らすこととなった主人公の女の子が、お隣さん宅(とはいっても田舎なので数百mは離れてる)を好奇心で覗くと、同年代の少年がベットに横になっていた。
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この車いすの少年と仲良くなった女の子は、悲しみを癒すためなのか度々少年宅を訪ずれ一緒に遊ぼうとするが、少年の母親はわが子が女の子と仲良くなるのを極端に毛嫌いしている。

その毛嫌いっぷりは相当なもので、こっそりと二人が会ってることを知るとまるで『ミザリー』のようなヒステリーっぷりに。
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このお母さん・・・ちょっとおかしいぞ。

そして女の子は、この家の地下室には誰にも口外できない秘密が隠されていることを知ってしまうのです。
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小粒だけど、個人的にはなかなか楽しめた作品でした。

登場人物が少なくアクションも地味ですが、新しいほうの「ゾッド将軍役」の人や懐かしいピーター・フォンダも出演していて彼らの演技がすごく自然なので、映画全体のトーンが静かでリアルでしたね。
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モンスターホラー映画じゃなく、サスペンスホラー映画なので、最後にお母さんが炎の中から蘇り、しつこく二人を追いかけまわすこともありません・・・でも面白かったですよ。

映画鑑賞後に予告編を見たのですが、これネタバレしすぎです。

ここまでバラしといて「衝撃が待つラスト15分」とか「この家何かがおかしい」とか言われてもね( ̄д ̄)。






「ご近所さんがむちゃくちゃ怪しいぞ。」と、主人公が疑う映画で最も有名な作品と言えばやっぱり『裏窓』だと思います。

ヒッチコックの作品で公開はなんと1954年。

脚を骨折して車いす生活が余儀なくされているカメラマン。

「モン◎ト」もネットもない時代ですから「暇だよ〜やることないよ〜。」と、ついつい暇つぶしにご近所さんを覗き見しちゃうんですね。

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そこで見つけたのが対面のアパートに住んでる営業マン。

散々夫婦げんかしてると思ったら急に奥さんがいなくなったぞ。

旦那の方は雨の中何回も夜中に外に出てるし・・・ひょっとして・・・。

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「出歯亀なんかやめなさいよ!」って怒ってた看護師のおばさんやきれいな彼女も、怪しすぎる営業マンの行動を見るうちに主人公の「営業マン殺人犯説」に感化され、彼の手足となって犯人の証拠探しをお手伝いすることとなるんですね。

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その後、犯人に近づきすぎた主人公には最悪の展開が・・・。

最初は「やつが犯人だ!」と確信していたものの、犯人の完璧なアリバイに「やっぱり考えすぎだったのかな?」と思い直し、もう覗きはやめようか、と思いそうになった時にやっぱり犯人かもと思われる手掛かりが・・・。

そして最後は犯人との肉弾戦。

ユーモアを交えながらもサスペンスたっぷりに描いたこのストーリー展開は現代のサスペンス映画にも度々模倣されています。


その一本が『裏窓』の青春版リメイクとも呼べる『ディスタービア』です。


主人公を演じるのは『トランスフォーマー』シャイア・ラブーフ

彼はケガのために動けないわけではなく、暴力事件を起こしたために家から出られない自宅軟禁処分を受けてるんです。

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足首にはGPS付きの監視装置。 壊そうとしたり、家から一定の範囲外に出れば即警察が飛んでくる仕組み。

しょうがないからネットゲームでもやって暇をつぶそうとしたら知らない間に母親がネットを解約している。

「なにすんだよ!母ちゃん!」
怒る主人公を前に母ちゃん(キャリー・アン・モス)は「自宅謹慎中だぞ!まずはごみ箱のようなこの部屋を片付けろ!」・・とハサミを持ち出しTVモニターの電源コードを無慈悲に切断するのです。

そこで『裏窓』と同じようにご近所さん覗きで暇をつぶし始めた主人公。

毎日2回芝刈りをしてる几帳面な隣のオヤジが車の前部をぶつけてるぞ。

あれ、ニュースでやってた「犯人と思われる車」と同じ車種だ・・・。

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学校の悪友と隣に引っ越してきた魅力的な女の子が、証拠探しごっこに付き合うことになるんですが、『裏窓』と同じようにラストは犯人からのしっぺ返しを喰らうことになります。

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母ちゃんまで巻き込まれたり、主人公はお隣さんが散々殺しまくった被害者が何人も投げ捨てられている地下道に落ちてしまったり・・・阿鼻叫喚の対決シーンでした。

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犯人役はどんな役柄もこなせるベテラン俳優デヴィッド・モース

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『ザ・ロック』『コンタクト』『グリーンマイル』がわたしの印象に残ってますが、この映画ではわざと最初から怪しい雰囲気を醸し出してましたね。


今回記事を書くために久しぶりに再鑑賞しましたが、やっぱり面白かったです。

犯人に襲われた時には警察を呼ぶために敢えて自分からGPS監視装置のセーフティエリアを飛び出す・・っていうところも『裏窓』にはない、現代版らしい作戦だな〜って思ったんですが、普段は速攻で飛んでくる警察もこういう時に限って遅いんですよね。

青春コメディと思いきや、ラストは緊張感が思いっきり加速していくところがイイです。






30年くらい前の作品で『メイフィールドの怪人たち』という映画も、怪しすぎるご近所さんとのドタバタを描いた作品ですが、この映画の展開も@:あいつら見るからに怪しいぞ ⇒ A:やっぱ考えすぎだったかな? ⇒ B本当にやばいやつらでした。・・という『裏窓』から通じるパターンを踏襲しています。


ジョー・ダンテ監督のユーモアあふれる作品ですが20年くらい観てないですね〜。

レンタルショップに置いてないんですよ。

廉価版出てるみたいだし買っちゃおうかな〜。


同監督作の『グレムリン』同様、ドタバタの中にもブラックユーモアが溢れ、映画全体がリズムに乗ってる楽しい映画でした・・・詳細は忘れてますが(笑)。






サスペンスではなく、モンスターホラー映画で「怪しすぎるご近所さんを疑う映画」と言えば『フライトナイト』ですね。

隣に引っ越してきた中条きよし風のダンディなおじさんは実は吸血鬼なのでは?
・・・でも誰も信じてくれない〜。
・・・彼女まで取られちゃった〜。


1985年にオリジナル版が公開、2011年には故アントン・イルチェンが主役でリメイクされてますが、わたし個人の感想では吸血鬼のダンディさ(演じるのはクリス・サランドン)と故ロディ・マクドウォールの出演という2点でオリジナル版に軍配を上げたいです。





まったく同じ設定でご近所さんが狼男、主人公が女子高生なのがその名も『女子高生VS狼男』(そのまんま)。

B級だけど結構面白かったですよ。

『フライトナイト』ロディ・マクドウォールが演じていたインチキモンスターハンターの役柄ををこの作品ではケヴィン・ソーボが演じています。





考えてみたら先日鑑賞した『アイム・ノット・シリアルキラー』という映画もご近所さんが怪しすぎる映画でした。


田舎町で葬儀屋の息子として暮らしている主人公。

彼は日常的に死体と接しているせいもあり、社会的病質者と診断を受けカウンセリングを受けてます。

そのために、同級生からはいじめを受けている。
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そんな彼の家の近所に住む温厚な老人(クリストファー・ロイド)のとんでもない秘密をある日偶然目撃してしまう。

その時からこの老人との密かな駆け引きがはじまるのだが・・。
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『スターマン/愛・宇宙はるかに』の殺人鬼版と呼んでいいものか、ラストの斜め上の展開には『宇宙からのツタンカーメン』のような衝撃を受けました。
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感想・・なんじゃこりゃ? でも独特な味わいがありましたよ。



いや〜、世の中には本当に色んな映画があるもんですね〜。






・・・・・・それでは、今日はこの辺で失礼します。







posted by タバスコ at 20:25| Comment(0) | ホラー映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする